配管図に使用するその他の記号例・製図方法
ここではプラント設備などの配管図(平面組立図、立面組立図、アイソメ図など)に使用されるその他の図記号を製図する場合の図面の書き方などを例を挙げてまとめています。
寸法の記入方法、配管の高さ(elevation)、こう配、ラインマーク、流体の流れ方向などの記号(文字記号)、レデューサの区別、マッチライン、バッテリーリミット、クラスチェンジ、矢視・断面・詳細の書き方などについて。
■ 寸法の記入方法
寸法は、配管図面いおいて線や文字と共に図面を表す大切な要素であり、寸法の記入方法の良し悪しは配管の加工や組立にも影響を及ぼし、場合によっては間違った製作の原因にもなり得るので、寸法記入には十分注意する必要があります。
配管図においては、一般には平面図面には平面的に表現できる寸法だけを寸法線を用いて記載し、また、立面図や立体図などにおいては、その高さ寸法だけを表示します。
高さの表示は、一般には”EL”(Elevation)で記入します。
以下に、配管図面における寸法記入の主なポイントを示します。
- 寸法の単位はミリ(mm)
- 原則として、寸法の単位はミリ(mm)とし、単位名は図面に記載する。
寸法に他の単位を用いる場合には、必ずその単位名を明記する。 - 角度の単位は度(°)
- 一般には角度は度(°)で表す。
必要がある場合には、度・分・秒(例:35°12′30″)を併記する。 - 寸法線両端の端末記号
- 寸法線の両端には、寸法補助線に接する矢印などの記号を付ける(下図参照)。
ただし、一枚の図面中では極力上図 a)、b) 及び c) の端末記号を混用しないようにする。 - 寸法線の引き方
- 寸法線は、支持する長さ又は角度を測定する方向に引く(下図参照)。
- 寸法補助線の書き方
- 寸法補助線は、指示する寸法の端に当たる図形上の点又は線の中心を通り寸法線に直角に引き、寸法線をわずかに越えるまで延長する。
寸法を指示する点又は線を明確にするため、特に必要な場合には、寸法線に対して適当な角度をもつ互いに平行な寸法補助線を引いてもよい。
(下図参照)
■ 配管高さの表示に使う文字記号・表示方法
配管図面の製図に用いる高さの表示方法は、一般に工場全体の高さに対して一つの基準線(Base Line)を設けて、その基準線からの高さで表現します。
この表示方法は、一般の機械製図図面と異なり、それぞれの高さを寸法線を記入して表さずに、以下の図のように EL(Elevation)表示で表します。
EL表示のほか、基準面(基準線)から配管やパイプラック、パイプサポートなどの上面或いは下面の高さを表す文字記号として、主に以下の記号が用いられます。
- EL:パイプの(中心)高さを表す場合(Elevation)
- BOP:パイプの下面の高さを表す(Bottom of Pipe)
- TOP:パイプの上面の高さを表す(Top of Pipe)
- TOB:パイプラック・架橋などの梁上面の高さを表す(Top of Beam)
- TOS:パイプサポート上面の高さを表す(Top of Support)
EL表示
パイプの高さを単に EL の文字記号のみで表示する場合は、パイプの中心高さを示します(下図参照)。
BOP表示
パイプラック上の配管などのように、サイズ(口径)の異なるパイプが同一のパイプサポートで支持されている場合には、これらの配管高さを表示するのにそれぞれのパイプ中心高さで表すことは非常に複雑・煩雑になります。
この場合、工事上はそれぞれの配管外径下面を合せて組み立てれば良いことであり、あえてパイプ中心高さを示す必要がありません。
そのため、一般にこのような場合の配管高さの表示には、例えば、”EL+BOP3200”などのように、BOP表示が用いられます。
BOPによる表示方法は、配管設計、配管図面作成及び施工上の面からも非常に有利な表示方法です。(下図参照)
TOP表示
BOP表示と同じ考えにより、TOP表示は例えば架橋類や建屋などの梁(はり)の下面を利用して配管を支持する場合や、地下埋設配管などのようにパイプの上面を明確にする必要がある場合などに用いる表示方法です。(下図参照)
■ 配管のこう配を表す図記号例
パイプのこう配は、配管を表した線の上側に沿わせた以下のような図記号(細い実線で描く)で図示します。
図記号のとがった先端は、高い方から低い方に向かって描きます。(下図参照)
- 【例1.配管のこう配の図記号】(こう配を表す数値を記入する場合)
- 【例2.配管のこう配の図記号】(こう配を表す数値を記入しない場合)
■ ラインマークを表す文字記号例
ラインマークは、以下の図のような文字記号を用いて図示します。
下図の例のように、配管を表す線に沿わすか、又は配管を表す線から引出線を用いて引き出して表します。
- 【ラインマークの文字記号例】
1)パイプの呼び径
2)流体の種類・状態
3)配管番号
4)配管の仕様(配管クラス)
5)保温又は保冷の種類及び厚さ(該当する場合に記入する)
■ 流体の流れ方向を表す製図例
配管内の流れの方向を図面に記載する場合には、以下の図のようにパイプを表す線に付けた矢印の方向で表します。
- 【配管内の流れ方向を表す製図例】
バルブや計装機器などの配管部品の流れの方向を特に表す必要がある場合には、その配管部品の図記号に沿わせた矢印で表します。
(下図参照。配管部品はチャッキ弁の例。)
- 【配管部品内の流れ方向を表す製図例】
■ レデューサの文字記号例
同心レデューサと偏心レデューサとの区別を特に図面に明示する必要がある場合には、同心レジューサを表す文字記号『CONC』、又は偏心レジューサを表す文字記号『ECC』をレデューサの図記号に付記します。(下図参照)
なお、”CONC”は、Concentric の略、”ECC”は Eccentric の略になります。
- 【同心レデューサと偏心レデューサとを区別する文字記号例】
偏心レデューサの水平部の上下位置を明示する必要がある場合には、下側が水平のときには文字記号『BOF』を、上側が水平のときには文字記号『TOF』を偏心レデューサの図記号の水平側に付記します。(下図参照)
なお、”BOF”は Bottom of Flat の略、”TOF”は Top of Flat の略になります。
- 【偏心レデューサの水平部の上下位置を表す文字記号例】
■ マッチラインの文字記号例
配管が複数の図面にわたって描かれる場合、他の配管図との接続境界を示すマッチラインは、接続境界において、配管と直角方向に描いた太い二点鎖線で表し、線に沿わせて文字記号『ML』と接続する配管図面番号を付記します。(下図参照)
- 【マッチラインの文字記号例】
■ バッテリーリミットの文字記号例
設備又は工事範囲の境界を示すバッテリーリミットは、太い二点鎖線で表し、その線に沿わせた文字記号『BL』を付記します。(下図参照)
- 【バッテリーリミットの文字記号例】
■ クラスチェンジの製図例
配管のクラスチェンジは、その境界から引き出した細い実線と、それに交差し、かつ、配管を示す線に平行に引いた2本の矢印で表します。(下図参照)
- 【クラスチェンジの製図例】
■ 矢視、断面及び詳細の製図例
矢視、断面及び詳細の表示は以下の図のように表します。
”A”は例を示します。
- 【矢視の製図例】
- 【断面の製図例】
- 【詳細の製図例】
■ 北方向マークの文字記号例
北方向マークは、方向を示す記号(矢印など)、角度を示す数値(0°、90°、180°、270°)及び建設のための仮の北方向を示す文字記号『CN』又は『PN』で表します。(下図参照)
なお、”CN”は Construction North の略、”PN”は Plant North の略を意味します。
- 【北方向マークの文字記号例】
■ 柱番号の製図例
パイプラック、建屋、架橋などの柱番号は、柱列の中心線の一端に描いた円の中の文字・数字によって表します。(下図参照)
なお、”CN”は Construction North の略、”PN”は Plant North の略を意味します。
- 【柱番号の製図例】